筋・筋膜性疼痛症候群とは?
筋・筋膜性疼痛症候群とは、筋肉や内臓などを包む筋膜が、何らかの原因で痛みを引き起こす症状のことです。
体のさまざまな部位がうずくように痛んだり、しびれたりします。
肩こりや腰痛などの中にも、筋・筋膜性疼痛症候群が原因のものがあります。
筋膜については、過去の記事でもご紹介しているので、そちらもご覧ください。
索状硬結(さくじょうこうけつ)が生まれる
筋膜が何らかの原因で硬くなることを索状硬結と言います。
筋・筋膜性疼痛症候群では、索状硬結によって周りの組織を圧迫し、筋肉の緊張、血行の低下、痛みや違和感などを引き起こします。
また、索状硬結の起きている場所では、トリガーポイントが生まれることがあります。
トリガーポイントとは、痛みの引き金(トリガー)となる部位のことで、指で押さえるなどで圧を加えたときに、体のどこかに「関連痛」と呼ばれる痛みを引き起こします。
関連痛はトリガーポイントで起きることもあれば、トリガーポイントから遠く離れた部位で起きることもあるため、正しくトリガーポイントにアプローチするには、専門的な知識が必要です。
マッサージなどでもみほぐしても痛みやこりがなかなか取れなかったり、すぐに再発したりする場合、トリガーポイントと関連痛がある部位が離れている可能性もあります。
症状
筋・筋膜性疼痛症候群では、どんな症状が生まれるのでしょうか。
代表的な例を紹介します。
うずくような痛み
筋・筋膜性疼痛症候群では、体のさまざまな部位に、うずくような、焼けるような痛みが発生します。
痛みが発生する部位や体質などによって、痛み方はそれぞれ異なります。
ひどいものだと、何もしていなくても痛みに襲われたり、あまりの痛さに歩く・立つ・座るなどの日常生活が困難になったりすることもあります。
肩こり
筋・筋膜性疼痛症候群から、慢性的な肩こりにつながることがあります。
筋・筋膜性疼痛症候群によって、肩や首の周りで痛みが生まれると、筋肉が緊張してこわばってしまいます。
こわばった筋肉は疲れが溜まりやすく、痛みにつながる物質を生み出しやすくなることから、慢性的な肩こりになりやすいです。
腰痛
筋・筋膜性疼痛症候は腰痛とも深く関わっています。
筋・筋膜性疼痛症候群によって、痛みをかばって姿勢が悪化したり、腰回りの筋肉が痛みで緊張して筋力低下などを引き起こし、腰の筋肉への負担が大きくなって腰痛につながる可能性があります。
また、いわゆるぎっくり腰を引き起こす原因のひとつとして、筋・筋膜性疼痛症候群が疑われることもあります。
原因
なぜ、筋・筋膜性疼痛症候群が生まれるのでしょうか。
一言で言うと、「筋膜が傷ついたまま回復できず、硬くなってしまう」からです。
それでは具体的に、どのような習慣や体質が筋・筋膜性疼痛症候群を引き起こすのでしょうか。
代表的な例を紹介します。
筋肉の損傷が治りきらない
激しい運動やケガなどで筋肉が損傷した後、それが自然に治りきる前に新たな損傷を受けたり、疲れで上手く治らなかったりして、筋肉の損傷が慢性化すると、周りの筋膜にも大きな負荷がかかります。
そうして傷ついた筋膜は硬くなり、トリガーポイントが生まれて筋・筋膜性疼痛症候群につながる可能性があります。
スポーツ選手や体を動かす仕事をしている人、繰り返しケガをしている人によくみられます。
姿勢が悪い
筋・筋膜性疼痛症候群によって姿勢が悪くなり、肩こりや腰痛などにつながることがあるとお話ししましたが、逆に、姿勢の悪さが原因で筋・筋膜性疼痛症候群を引き起こすこともあります。
姿勢が悪いと、普段は全身の筋肉に分散されている負担が、一部の筋肉に集中しやすくなります。
ケガによって筋肉が損傷する場合と違い、姿勢は意識して矯正しないと、筋肉への負担が大きな状態のまま過ごすので、筋・筋膜性疼痛症候群につながりやすくなります。
血行不良
血行不良だと筋肉に十分な栄養が送り届けられないことから、筋肉が損傷しやすくなったり、損傷した筋肉の回復が上手くいかなくなったりします。
その結果、筋肉の損傷が慢性化して、筋・筋膜性疼痛症候群につながりやすくなります。
エコー検査技術の発達により筋・筋膜性疼痛症候群へのアプローチが可能に
筋・筋膜性疼痛症候群は、最近まで原因不明の痛みの一つでした。
その理由は、筋膜の不調を示すトリガーポイントがCTやMRIといった検査では見つけにくく、原因の特定が困難だったからです。
しかし近年、エコー(超音波)検査技術が発達したことによって、筋膜の不調がその目で確認できるようになったことから、痛みの原因の一つに筋膜があることがわかってきました。
そこから、治療方法や予防方法もいくつか生み出されています。
エコーガイド下筋膜リリース
エコーガイド下筋膜リリースは、硬くなっている筋膜に生理用食塩水を注入して、筋膜をはがす方法です。
エコー画像で患部を確認しながら、筋膜が厚くなっている場所=トリガーポイントに生理用食塩水を注入します。
鍼
実は、エコーガイド下筋膜リリースの技術が確立されたことで、鍼による施術が筋・筋膜性疼痛症候群へのアプローチとして注目されています。
というのも、鍼で施術する部位の多くが、トリガーポイントの位置と一致しており、エコーガイド下筋膜リリースと同じようなアプローチをしていたのではないかと考えられています。
例えば、肩こりや腰痛で悩んでいる人が鍼による施術を受けて楽になったという話も、実は筋・筋膜性疼痛症候群で生まれたトリガーポイントにアプローチしていた可能性があり、鍼と筋膜リリースとの関連性やメカニズムの解明が期待されています。
ストレッチ
筋・筋膜性疼痛症候群では、一時的に痛みが治まってきたとしても、筋肉への負荷が大きな生活をしていては、すぐに再発する可能性があります。
そのため、エコーガイド下筋膜リリースや鍼などの治療によって痛みが引いてきた後は、できるだけストレッチや次の姿勢矯正などで、筋・筋膜性疼痛症候群が再発しないよう対策するのが大切です。
ストレッチで筋膜を伸ばしたり、痛みで動かせなかった部分の筋肉をほぐしたりしましょう。
姿勢矯正
一部の筋肉に負担がかかるような姿勢を続けていては、何度エコーガイド下筋膜リリースや鍼でほぐしたとしても、いつかは痛みが戻ってきてしまう恐れがあるので、姿勢を矯正して筋肉への負担を減らしましょう。
原因がよくわからないときは医療機関に行こう
原因に思い当たる節がない謎の痛みに襲われたときは、できるだけ早く医療機関に行くべきです。
軽いケガで済む場合もあれば、何らかの病気の可能性もあるので、医療機関で診断を受けて原因を特定し、その後の対応を決定しましょう。
ここからは、謎の痛みに襲われたときに、どこに行くと良いかご紹介します。
ペインクリニック
痛みの専門家と言えばペインクリニック。
ここでの診断によって治療方針が決まるので、最初に向かう医療機関としては一番おすすめです。
もちろん、ペインクリニックで治療を受けることもできます。
ちなみに、エコーガイド下筋膜リリースを生み出したのもペインクリニックの医師です。
整形外科
外傷・捻挫・骨折・腰痛などに対応するのが整形外科。
筋膜のトラブルも整形外科で対応していることが多く、近くにペインクリニックがない場合はこちらに相談すると良いでしょう。
内科
痛みの原因が内臓の病気にあるような場合は、内科で治療を受けることもあります。
はじめに相談するというよりは、ペインクリニックや整形外科で診断を受けた後で紹介されるケースがよくみられます。
眼科や歯科、耳鼻科など、明らかに専門外のところを除けば、基本的にどこの科でも診断に基づいて自分のところで治療をするのか、他科・他院に案内するのかを判断してくれます。
そのため、どうしてもわからなくて不安なときには、かかりつけ医や最寄りの医療機関に相談してみるのも一つの方法です。
おわりに
エコー検査技術の進歩によって、これまで原因不明の痛みだったのが、筋・筋膜性疼痛症候群という対処可能な症状になってきました。
原因不明の痛みに悩んでいた人は、ぜひ一度医療機関に相談してみましょう。