そもそも筋膜リリースって何?
筋膜リリースでどのようなことができるのかについてお伝えする前に、そもそも筋膜リリースとはどういったものなのかについてお伝えしたいと思います。
筋膜リリースとは、全身を包む筋膜をほぐす方法の総称です。
筋膜をほぐすことができればその種類は問いませんので、例えばマッサージでもむ、ストレッチで引き延ばす、生理用食塩水などを筋膜に注射するなど、筋膜をほぐすあらゆる方法が筋膜リリースと言えます。
筋膜にはいくつか種類があり、ボディスーツのように体全体を包んだり、一つひとつの筋肉の周りを包んだりしています。
それぞれの筋膜が複雑に絡み合うことで、筋膜はさまざまな力を発揮します。
筋膜は硬くなる
筋膜は主に、コラーゲンとエラスチンという2種類のタンパク質と、水分でできています。
コラーゲンは頑丈さ、エラスチンは伸び縮みする性質を持っています。
これらの特性を持ったタンパク質が交互に重なることで、筋膜はしなやかに伸び縮みしながら体の組織を支えています。
しかし、筋膜は長時間体を動かさずに過ごしたり、急に強い負荷をかけたりすると、カサブタのように硬くなってしまうという性質があります。
これを筋膜の癒着といい、癒着した筋膜は体のさまざまな不調につながる可能性があります。
筋膜リリースでは、こうした「すでに筋膜が癒着している場所」や「筋膜の癒着が起きてほしくないところ」などをほぐしていきます。
筋膜をほぐすとこんなことが
ここまで、筋膜リリースとはどのようなものかについてご紹介しました。
ここからは、筋膜リリースするとどうなるのかについてご紹介します。
血液やリンパ液の循環を促す
硬くなった筋膜は、周りの血管やリンパ管を圧迫して、血液やリンパ液の流れを妨げることがあります。
血液には全身の組織に酸素や栄養を送り届ける役割が、リンパ液には全身に溜まった余分な水分や老廃物を回収する役割があります。
そのため、血液やリンパ液の流れが妨げられると、筋肉や内臓などに必要な栄養が送り届けられず機能低下につながったり、老廃物が溜まってむくみやすくなったりします。
筋膜リリースで筋膜をほぐし、血管やリンパ管の圧迫をなくして、血液やリンパ液がうまく流れるようにアプローチします。
関節可動域を広げる
筋膜は癒着すると、体液の流れだけでなく、関節の動きを妨げる場合もあります。
筋膜は全身をピッタリと包んでいます。
イメージとしてはセーターやストッキングなど、ある程度伸びるタイプの衣類が近いでしょう。
筋膜の癒着は、それらの服がねじれて固まった状態に近いものがあります。
試しに、着ている服の左わきの部分を、右手でギュッとつかんでから、ねじってみてください。
その状態で左腕を持ち上げようとすると、途中で服が引っかかって動けなくなると思います。
そして、掴んでいた右手を放すことで、腕が上がるようになるはずです。
この実験で、右手で服をつかんでいる場所こそが癒着した筋膜であり、筋膜の癒着によって関節の可動域を狭めることがわかったと思います。
筋膜リリースで硬くなった筋膜を緩めることで、関節可動域を広げることにつながります。
筋肉のスムーズな動きを助ける
癒着した筋膜は、血管やリンパ管のほかに、筋肉や神経を圧迫することがあります。
すると、筋肉は緊張してうまく機能しなくなる可能性があります。
また、上述したように血液の流れが滞って筋肉に栄養がうまく届かない場合も、筋肉の機能低下につながりやすくなります。
筋膜リリースで筋膜をほぐし、筋肉の緊張を取り除いたり、十分な栄養が筋肉に届くように血液やリンパ液などの流れをスムーズにしたりして、筋肉がスムーズに動けるようアプローチします。
肩こりや腰痛などに対処する
実は、肩こりや腰痛などの症状には、「姿勢」が深く関わっていると考えられています。
筋膜が硬くなると、周りの筋肉や神経を圧迫して、痛みや違和感、不快感を覚えることがあります。
これらの症状から無意識に体をかばって、猫背などの良くない姿勢をとることにつながり、肩こりや腰痛を引き起こす原因のひとつになる恐れがあります。
そのため、筋膜リリースで筋膜をほぐすことによって、元の姿勢を取り戻し、ひいては肩こりや腰痛への対策へとつながると期待されています。
筋膜と姿勢、そして肩こりや腰痛などとの関係は、以前の記事で詳しくご紹介しているので、そちらもぜひご覧ください。
筋膜リリースはこんな人たちにおすすめ
ここからは、筋膜リリースがどんな人におすすめなのかについてご紹介します。
ヘルスケアに積極的な人
実は、肩こりや腰痛は原因が特定できない場合が多く、姿勢を整えたり、患部をもみほぐしたりして、原因となるものをしらみつぶしにしていくことで対策を講じるケースが多いです。
そしてこれまでにお伝えした通り、筋膜の癒着は筋肉の緊張や姿勢の悪化を引き起こし、肩こりや腰痛といったさまざまな不調へとつながる可能性があります。
そのため、筋膜リリースで筋膜の癒着をほぐすことで不調につながるリスクを減らせるため、ヘルスケアとして大きな期待がよせられています。
後述しますが、ストレッチやフォームローラーなど、自宅で手軽に行える方法から、施術院や医療機関に行ってほぐしてもらう方法まで、筋膜リリースによるヘルスケアにはさまざまなものがあるので、自分に合った方法を探してみると良いでしょう。
ボディメイクを頑張りたい人
美しいスタイルに向かって頑張りたいという方にも、筋膜リリースはおすすめです。
筋膜リリースによってむくみを取り除き、スタイルに影響する僧帽筋や広背筋などが十分に機能を発揮できるようにすれば、ボディメイクの効率も向上します。
運動前にコンディションを整えたい人
筋膜リリースは、運動前のコンディション調整としても活躍しています。
筋肉は緊張すると、本来のパフォーマンスが発揮できなくなるほか、同じ運動をしても大きな負荷を感じてケガをしやすくなります。
筋膜リリースで筋肉がスムーズに動くようになれば、運動時に十分なパフォーマンスを発揮できるほか、ケガを防ぐことにもつながります。
筋膜リリースはこんな方法でできる
ここまでは、筋膜リリースによってどんなことが起こるのかについてご紹介しました。
ここからは、筋膜リリースはどのようにして行われるのか、代表的なものをいくつかご紹介します。
ストレッチ
テレビ番組などでも紹介されたストレッチによる筋膜リリースです。
筋膜リリースしたい部位を「引っ張って伸ばす」イメージでストレッチをしていきます。
特に専用の道具が必要ないので、普段の生活に取り入れやすいことが特徴です。
過去の記事でもストレッチによる筋膜リリースの方法についてご紹介していますので、まずは「ストレッチによる筋膜リリース」とはどういったものか知りたいという方は、そちらの記事もご覧ください。
【関連記事:ストレッチで「3つの筋膜」を伸ばして理想のボディを目指そう!】
フォームローラー
筋膜リリース専用のアイテムとして有名なのはフォームローラーでしょう。
スポーツ選手や芸能人の方が使って、話題になったこともありました。
筋膜リリースを行いたい場所に押し当てて転がすことで、効果的な筋膜リリースが可能です。
値段も安く、誰でも手軽に筋膜リリースを行うことができます。
フォームローラーによる筋膜リリースの方法や、フォームローラーの選び方については、以前の記事でご紹介していますので、ご興味がある方はぜひ!
筋膜リリースをするのに役立つ「フォームローラー」の選び方とは?
誰かにほぐしてもらう
筋膜リリースは自分で行う以外にも、接骨院や整骨院、ボディケアサロン、トレーニングジムなどで専門家にもみほぐしてもらうこともできます。
自分で筋膜リリースを行うときに比べ、豊富な知識と技術を持った専門家のもとで施術を受けられることがメリットです。
費用をかけてでも、しっかりと筋膜リリースの施術を受けたいという方は、こちらをおすすめします。
【関連記事:実はこんなところでも?筋膜リリースを受けることができるのは】
筋膜リリースで注意すること
筋膜リリースを行うときに注意しなければならないのが、必要以上に強い負荷をかけることです。
筋膜リリースで体に負荷をかける目的は、あくまでも狙った筋膜にほぐす力を送り届けるためであり、筋膜をほぐす力以上の負荷をかける必要はまったくありません。
そのため、「強い負荷をかければ、その分効果がある」と考えて、必要以上の力で筋膜リリースをしようとするのは正しくありません。
むしろ、強すぎる負荷が体にかかると、周りの筋肉が傷ついて、炎症を起こす可能性もあります。
そのため、正しい負荷で筋膜リリースを行うように心がけることが大切です。
例えば、ストレッチやフォームローラーを使って自分で筋膜リリースするときには適度に力加減をする、誰かに筋膜リリースしてもらうときには、痛いと感じた際にすぐに止められるようにするなど、やり過ぎを防ぐための対策を講じておきましょう。
おわりに
今回は、筋膜リリースを行うとどんなことが起こるのか、どんな人が行うと効果的なのかについてご紹介しました。
筋膜リリースは筋膜をほぐしてさまざまな不調に備えたり、理想の体型を作ったり、運動時の筋肉が十分に機能を発揮できるようにしたりと、さまざまな目的で活用できます。
ぜひ、この機会に筋膜リリースを始めてみてはいかがでしょうか。