脊柱起立筋とは
脊柱起立筋は、背中全体を覆っている6本の長い筋肉です。
後頭部から腰のあたりまで、背骨を中心に左右3列ずつ伸びている筋肉群で、背骨に近いものから「棘筋(きょくきん)」「最長筋(さいちょうきん)」「腸肋筋(ちょうろっきん)」という3種類の筋肉でできています。
脊柱起立筋の機能
脊柱起立筋を一言で言うと、上半身を後ろに引っ張る筋肉です。
脊柱起立筋が上半身を後ろに引っ張ることで、後ろにのけぞったり、左右に上体を傾けたりできます。
体を動かしていないときでも、脊柱起立筋が上半身を後ろに引っ張ることによって、背中が丸まらず、背筋のまっすぐに伸びた姿勢をキープできます。
また、脊柱起立筋は美しい背中を作り出すために大切な筋肉でもあります。
脊柱起立筋が発達すると、背骨のラインをくっきりと浮かび上がらせて、背中を立体的に見せられるため、背中の見える服装が似合うようになります。
余談ですが、トレーニング好きの中には脊柱起立筋のことを「背中のシックスパック」と呼ぶ人もいます。
シックスパックは、お腹の表面にある腹直筋(ふくちょくきん)がきれいに6つに割れてみえる状態で、お腹の見た目づくりに大きな影響を与えます。
このことからも、脊柱起立筋が背中をきれいに見せるために大切な筋肉であることがうかがえます。
脊柱起立筋の周りで起こるトラブル
脊柱起立筋の周りでは、どんなトラブルが起こるのでしょうか。
姿勢の悪化
脊柱起立筋はまっすぐな姿勢をキープする上で大切な筋肉のひとつです。
脊柱起立筋がうまく機能しなくなると、上半身を後ろに引っ張る力が減るため、背中が丸まり、だらしない姿勢になってしまう可能性があります。
代表的なものが猫背でしょう。
猫背は、単にだらしない姿勢というだけでなく、さらなるトラブルを招きやすい姿勢でもあります。
人の体は本来、背骨や骨盤などの骨格を使って体重を支えており、筋肉には大きな負荷がかからないようになっています。
しかし、猫背の姿勢では、頭と胸を前に突きだして過ごすため、骨格で支えることができなくなり、それを補うために筋肉の力が必要になります。
はじめは小さな負荷が加わるだけですが、「チリも積もれば…」という言葉もあるように、悪くなった姿勢を長期間続けると、背中や腰、肩の筋肉に大きな負荷がかかり、さまざまなトラブルへと発展していくと言われています。
腰痛
姿勢の悪化が原因で、腰痛に至ることがあると言われています。
姿勢が悪くなって背中や腰の筋肉にかかる負荷が増えると、それらの筋肉は次第に疲れ、筋力が落ちていきます。
筋力が落ちると、普段の生活のちょっとした動きでも、腰の筋肉に大きな負担がかかることがあり、慢性的な腰痛やぎっくり腰につながると言われています。
以前の記事で、腰痛の原因について詳しくご紹介しているので、気になった方はぜひそちらもご覧ください。
肩こり
肩こりも、姿勢の悪化によって引き起こされやすいトラブルのひとつと言われています。
姿勢が悪くなった人に多いのが、頭を体の前に突き出している人です。
頭を突き出した状態だと、肩や首の筋肉に余計な負荷がかかるようになり、筋肉の緊張を引き起こすことがあります。
筋肉の緊張は疲れや痛み、だるさなどを引き起こすようになると考えられており、それが肩こりや首こりと呼ばれます。
脊柱起立筋をケアしよう
脊柱起立筋に関係するさまざまなトラブルをご紹介しましたが、対処法はあるのでしょうか。
ここからは、脊柱起立筋が正しく機能するために、おすすめの3つの方法をご紹介します。
筋力トレーニング
脊柱起立筋をケアする方法として最も一般的なのは、筋力トレーニングを行って脊柱起立筋の筋力アップを図ることです。
脊柱起立筋の筋力が上がることで背中もまっすぐになっていき、背筋の通ったきれいな姿に近づきます。
うつぶせに寝転がり、胸と足を浮かせる「バックエクステンション」は、脊柱起立筋や僧帽筋、広背筋など背中の筋肉全体をまんべんなく鍛えられるので、おすすめのトレーニング方法です。
姿勢矯正
上述のように、脊柱起立筋がうまく機能しなくなると姿勢が悪くなり、さまざまなトラブルを引き起こすと言われています。
姿勢矯正を行って正しい姿勢を取り戻し、トラブルを起こさずに済むようにアプローチします。
また、美しい姿勢は美しいスタイルをつくることにもつながります。
姿勢を整えて、背筋がまっすぐに伸びた美しいボディを作り上げましょう。
筋膜リリース
脊柱起立筋へのケアとして、近年注目を集めているのが筋膜リリースです。
筋膜リリースで脊柱起立筋の周りの筋膜をほぐすことで、脊柱起立筋の動きがスムーズになると考えられています。
そこでここからは、脊柱起立筋へのケアとしての筋膜リリースとはどういうものかをご紹介します。
筋膜リリースとは
筋膜リリースとは、さまざまな組織の表面を包み込んでいる筋膜を軟らかくほぐす方法のことで、硬くなった筋膜によって引き起こされるトラブルにアプローチします。
患部をストレッチで引き延ばしたり、マッサージで揉みほぐしたりと、筋膜リリースにはいくつかの方法があります。
筋膜が硬くなって脊柱起立筋周りのトラブルに?
筋膜とは、筋肉や内臓など、体の組織の周りを包んでいる膜のことです。
筋膜は長時間同じ姿勢で過ごしたり、強い衝撃を受けたりしたときに、カサブタのように硬くなる性質を持っており、脊柱起立筋周りのトラブルにもつながることがあると言われています。
特に背中は、意識して動かすことがあまりないため、脊柱起立筋周りの筋膜は硬くなりやすいと言えるでしょう。
硬くなった筋膜は、近くにある筋肉、内臓、神経、血管などを圧迫します。
圧迫を受けた筋肉は緊張します。
そして、緊張した筋肉は次第に疲れて筋力の低下を引き起こし、さまざまなトラブルへとつながっていくと考えられています。
だからこそ、筋膜リリースで筋膜をほぐし、脊柱起立筋が正しく動かせるようにアプローチすることが大切です。
フォームローラーで背中をほぐそう
筋膜リリースを行うときに心強いアイテムがあります。
それが「フォームローラー」と呼ばれる、表面に凹凸のある円柱状の棒です。
筋膜をほぐしたい場所に沿わせて、体重をかけながら転がすことで、誰でも簡単に、効率良く筋膜リリースができるアイテムです。
背中への筋膜リリース手順
①壁を背にして立ちます。
②背中と壁の間にフォームローラーを差し込み、落ちないように背中で壁へと押し付けます。
③フォームローラーに体重をかけながら、背中に当てたフォームローラーが転がるように、膝を曲げたり伸ばしたりします。
ゆっくりと20秒ほど行いましょう。
※ちなみに、寝転がって床の上で行ってもOKです。
大胸筋もほぐして姿勢をまっすぐに
脊柱起立筋周りの筋膜リリースができたら、大胸筋周りの筋膜にも筋膜リリースを行うことをおすすめします。
大胸筋周りの筋膜が硬くなると、背中の筋膜が引っ張られて前かがみのだらしない姿勢になりやすくなります。
どういうことか分かりづらいと思いますので、ここで少し実験をしてみましょう。
・できるだけピッタリ目の服を着て、胸の中心部分で服をつまみ、クルクルとねじっていってください。
※肌着でOKです。跡が付かないものや、跡が付いても構わない服を使いましょう。
・だんだんと、服が胸の方に寄っていき、背中が丸まっていくのではないかと思います。
このとき服をねじった場所が硬くなった筋膜であり、胸のあたりの筋膜が硬くなったときに、背中が丸まっていくことが分かります。
だからこそ、背中だけでなく大胸筋周りの筋膜もしっかりとほぐし、姿勢が悪くならないようにしましょう。
大胸筋への筋膜リリース手順
①うつぶせの状態で寝そべります。
②右ひじを立てて上体を起こし、フォームローラーを左胸の下に「背骨と平行」に置きます。
③左腕を横に伸ばして、左胸にローラーが当たるように上体を下ろし、体の中心から左肩のあいだをローラーが転がるように、左右に20秒ほど体重移動していきます。
※胸をしっかりとローラーに押し付け、「痛気持ちいい」くらいの強さで行います。
左胸が終わったら、右胸も同様に行いましょう。
おわりに
今回は、脊柱起立筋についてご紹介しました。
脊柱起立筋は、姿勢をキープし、背中を美しく見せるために大切な筋肉なので、脊柱起立筋が正しく機能するよう十分にケアをする必要があります。
脊柱起立筋のケアをしっかりと行い、憧れの背中美人を目指しましょう。