腸脛靭帯って何?
腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)は、太ももの外側をお尻からひざにかけて伸びている靭帯です。
太ももの筋肉とお尻の筋肉を外側からつなげ、ジャンプやステップ、ダッシュなどの際に太ももの外側から支える役割を持っています。
腸脛靭帯炎ってどんな症状?
腸脛靭帯と太ももの骨が過度に摩擦を起こしたとき、腸脛靭帯炎を起こすことがあります。
腸脛靭帯炎では、お尻からひざの外側にかけてうずくような痛みや腫れが起きるほか、ジャンプしたり走ったり、階段を下りたりしたときに、太ももからひざにかけて痛みを引き起こします。
腸脛靭帯と大腿骨の間で摩擦が増える要因としては、次のものがあります。
・ジャンプやステップ、ランニングを繰り返す
・股関節が硬くなっている
・O脚になっている
・靴が合っていない(靴が硬い、ヒールが高い、サイズが合わないなど)
ご紹介しているのはあくまで一例であり、他にも足首やひざ、腰などに負担のかかる過ごし方をしている人は、腸脛靭帯への負担が増えて炎症を起こすことがあります。
ここからわかる通り、たとえスポーツをしていない人でも、日々の過ごし方や体の動かし方などによっては、腸脛靭帯炎になる可能性はあります。
ちなみに、スポーツをしている人の場合、試合などに向けて練習量を増やしたときなどに起こりやすく、十分なケアが必要です。
腸脛靭帯炎が起きたときのケアとは?
まずは、突然腸脛靭帯炎に襲われたときのケアについてご紹介していきます。
強い痛みに襲われたときの基本的な対処法は、できるだけ早く炎症を引かせることです。
以下の2つを行いましょう。
筋膜リリースで、炎症によって硬くなった腸脛靭帯を軟らかくほぐそう
炎症が起こった腸脛靭帯は硬く緊張することがあります。
緊張した腸脛靭帯をほぐすために、筋膜リリースが役立ちます。
筋膜って何?
筋膜は全身の組織を包んでいる膜で、腸脛靭帯の周りも包んでいます。
筋膜が癒着するとき起きるのが、周りの筋肉や神経、血管などへの圧迫です。
筋膜が癒着したままだと、筋肉をほぐしても上手くほぐれなくなります。
炎症を起こしたり緊張したりして動かさなくなった筋肉のまわりでは、筋膜が癒着しやすくなっているので、腸脛靭帯炎が起きた後は、筋膜の癒着が起きていることも少なくありません。
だからこそ、筋膜リリースで腸脛靭帯に関わっている筋膜をほぐし、筋肉を緊張から解き放つことが大切です。
腸脛靭帯への筋膜リリース
腸脛靭帯周辺の筋膜が硬くなっていると、太ももの外側が上手く伸び縮みしなくなっていき、ジャンプやステップをしたり、歩いたり走ったりするときに痛みや違和感を覚えることがあります。
腸脛靭帯の周り、太ももの外側に筋膜リリースして、腸脛靭帯がしっかりと伸び縮みできるようにほぐしていきましょう。
①左向きに寝転がり、左ひじを立てます。
②そこから、右足を左ひざの前辺りにつきます。
③左ひじ、左のつま先、右足の3カ所で体を支え、左の太ももの下にフォームローラーを差し込みます。
④上下に体重移動して、左の太ももの外側をほぐしていきます。
4~5往復行いましょう。
左側が終わったら、右側も同様にほぐしていきます。
お尻の筋膜リリース
実は腸脛靭帯が硬くなる要因のひとつに、お尻の筋膜や筋肉の硬さも関わっています。
お尻の筋膜や筋肉が硬いと、たとえ腸脛靭帯をほぐしてもすぐに硬くなってしまう可能性があります。
なぜなら、お尻の筋膜や筋肉が硬くなっていると、股関節の柔軟性が落ちて足の曲げ伸ばしが上手くできなくなってしまうからです。
足の曲げ伸ばしが上手くいかなくなることで、腸脛靭帯を含む足の筋肉が十分に動かなくなります。
動かなくなった筋肉はしだいに筋力が衰え、柔軟性がなくなっていきます。
だからこそ、お尻の筋膜や筋肉をほぐし、股関節が軟らかい状態をキープしましょう。
まずは筋膜からほぐします。
①座った状態で両手と右足を床につけて腰を浮かせ、左のお尻の下にフォームローラーを差し込みます。
②左足を右ひざの辺りに乗せ、前後に体重移動してお尻の筋膜をほぐしていきます。
ゆっくりと、4~5往復ほど行うと良いでしょう。
左側が終わったら、右側も同様にほぐしていきます。
ストレッチで筋肉をほぐそう
筋膜をほぐしただけでは腸脛靭帯の緊張をほぐすには不十分です。
筋膜をほぐした上でストレッチを行い、筋肉をほぐしていきましょう。
①仰向けに寝転がり、腰を捻るように左足を右側に送ります。
左ひざを曲げて、下半身だけ右側を向くようなイメージです。
②お尻の左側から太ももにかけて伸びていると感じるあたりで止めて、左ひざを右手で押さえましょう。
30秒ほどキープします。
左側が終わったら、右側も同様に伸ばしていきます。
腸脛靭帯炎になりにくい体を作るため
ここからは、腸脛靭帯炎にならないように気をつけることや、取り組めることについてご紹介します。
お尻の筋肉を鍛えよう
お尻の筋力が弱いと股関節が安定しなくなり、腸脛靭帯が上手く伸縮せず、緊張で硬くなりやすくなります。
お尻の筋肉を鍛えることで、腸脛靭帯が軟らかい状態でキープできるようにしましょう。
お尻の筋肉を鍛えるには、スクワットがおすすめです。
スクワットは下半身全体や腰、背中など、さまざまな部位を鍛えられるので、ボディケアとしておすすめのトレーニングのひとつです。
自分に合った靴を使おう
腸脛靭帯炎につながる原因として、靴が合っていないことが挙げられます。
靴が合っていないと、普通に歩いていても足への負担が増えたり、足に負担のかかりやすい歩き方になったりして、腸脛靭帯のほか、ふくらはぎや股関節の筋肉に負担がかかっていきます。
そうして筋肉への負担が限界を超えたときに、炎症を起こすことがあります。
だからこそ、自分に合った靴を履き続けることが重要です。
サイズが合っていないものは買い替えましょう。
靴底が硬かったり、ヒールが高かったりする場合には、インソール(中敷き)を使うことをおすすめします。
中敷きを使うことで、靴に足りないクッション性を補ったり、ヒールの高い靴でもつま先への負担を少なくしたりすることができます。
おわりに
今回は、自分でできる腸脛靭帯炎のケアについてご紹介しました。
股関節が硬い人や、靴が合っていない人の場合はスポーツをする人でなくても起こる可能性がある腸脛靭帯炎。
万が一のときに適切にケアできるように、また、腸脛靭帯炎を起こさずに済むように、この記事を参考にしてもらえればと思います。