背中ってどんな場所?
背中は一般的に、首の後ろの付け根から胴のくびれの辺りまでを指すことが多く、真ん中には背骨が通っています。
いろいろな筋肉が集まる場所
背中には広背筋、僧帽筋、脊柱起立筋など、大小さまざまな筋肉が集まっています。
それぞれの筋肉が互いに支え合い、ときには引っ張り合うことによって、上半身のバランスを保っています。
遠くのものを手前に引き寄せる、重いものを抱えて持ちあげる、上半身を後ろにそらすなどの際に背中の筋肉が活躍します。
姿勢と密接な関係
背中のコンディションと姿勢との間には、密接な関係があると言われています。
背中にトラブルがあることで、姿勢が崩れやすくなったり、逆に姿勢が悪いことによって、背中のトラブルにつながったりすることもあります。
背中に違和感や不快感があると、それをかばうように姿勢が崩れていきます。
特に、前かがみの姿勢を続けてしまうことから「猫背」の姿勢になりやすく、そこから新たなトラブルへと発展していくこともあります。
背中の不調は体のさまざまなトラブルに
背中の不調は、さまざまなトラブルの原因になると言われています。
代表的なものをご紹介しましょう。
肩こり・首こり
猫背のような悪い姿勢が続くことで起きやすくなるとされるのが肩こりや首こりです。
人の体は本来、骨格で体を支えられるようになっています。
しかし、背中の調子が崩れて姿勢が悪くなると、重心の位置がずれてしまうことから、体は無意識にバランスをとるために、骨格ではなく筋肉で体を支えようとして、筋肉への負荷が増え、痛みや違和感を生じます。
こうした痛みや違和感が肩や首の周りで起こるのが、肩こりの原因のひとつだと言われています。
腰痛
背中の不調からは、腰痛にもつながっていくと考えられています。
現在、腰痛が起きる原因のうち、ヘルニアなどの病気を除いた8割については、原因が特定できないと言われています。
その中で、腰痛を引き起こす可能性が高いと言われるのが、背中の筋力低下です。
背中の筋力が低下すると、腰回りの筋肉が緊張して、疲れや痛みを引き起こしやすくなります。
冷え性
背中には多くの自律神経が通っています。
姿勢の悪化や筋力の低下など、背中の不調によって、自律神経は乱れると言われています。
自律神経は筋肉や内臓などの調子を整える役割があり、自律神経が乱れることで、エネルギーを熱に変えていた内臓がうまくはたらかなくなることから、体の冷えにつながると考えられています。
背中の筋膜をほぐそう
近年、背中のトラブルを引き起こす原因のひとつに、「筋膜」があるのではないかと言われています。
筋膜とは
筋膜とは、全身の組織を覆っている膜のこと。
柔軟に伸び縮みする「コラーゲン」、頑丈な「エラスチン」などが主な成分で、全身をボディスーツのように包むほか、筋肉や内臓一つひとつを包んで保護しています。
さきほどご紹介した広背筋や僧帽筋などの筋肉も、筋膜によって包み込まれています。
背中の筋膜はどんな役割を持っているの?
筋膜がそれぞれの筋肉や内臓を優しく包み込んでいるため、体を動かすときに組織同士がこすれて傷つかず、スムーズに動かすことができます。
また、体のすみずみまで行きわたり、骨格とともに全身の組織を支えていることから、「第二の骨格」と呼ばれることもあります。
背中の筋膜の不調はどんなトラブルを引き起こすの?
さて、筋膜は長時間同じ姿勢をとり続けたり、強い衝撃を受けたりすることで、「癒着」という現象を引き起こすことがあります。
癒着した筋膜は、カサブタのように硬くなって周りの筋肉や血管、神経などを圧迫します。
そして、圧迫を受けた筋肉が緊張して筋力低下につながったり、神経が刺激を受けて不快感を覚えたりします。
背中の筋膜が癒着した場合には、姿勢の悪化や腰痛などを引き起こしやすくなると言われており、癒着した筋膜をほぐして軟らかくすることが重要だと考えられています。
背中の筋膜をほぐす「筋膜リリース」とは?
近年、筋膜リリースや筋膜はがしという言葉が話題に挙がることが増えてきました。
「なんとなくの意味は分かるけれど、実際にどんなことをするのかはよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。
筋膜リリースとは、癒着した筋膜を軟らかくほぐす行為全般をさす言葉です。
ストレッチやマッサージに取り入れるのが一般的で、中には筋膜リリース専用の機器を使った施術を受けるものもあります。
筋膜リリースは、自分でできるものがあるほか、接骨院や整骨院、整形外科、整体院、ボディケアサロン、パーソナルトレーニングジムなど、さまざまな場所で施術やアドバイスを受けるものがあります。
ご自身に合った方法で筋膜リリースを行うのが大切です。
背中の筋膜リリースを3つご紹介
背中に起きた筋膜由来の不調に対して、筋膜リリースでアプローチしましょう。
ここからは、背中への筋膜リリースを3つご紹介します。
机にお辞儀して背中の筋膜を伸ばそう
背中全体を上下に引き伸ばして筋膜リリースを行う方法です。
背中だけでなく、お尻やモモの裏など、体の後ろ側全体へ筋膜リリースができるのでおすすめです。
①机の前に立ち、両手を机の上に置きます。
このとき、体を曲げずに伸ばした状態で立ってください。
②お辞儀の要領で上半身を前に伸ばしましょう。
背中からふくらはぎまで、体の後ろ側が引き伸ばされていくので、それ以上伸びなくなったところで20秒キープします。
背中は真後ろだけじゃない!弓なりのポーズで背中の横をほぐそう
背中の筋膜といえば、体の後ろに目が行きがちですが、広背筋など、体の横にまたがっている筋肉もあるので、体の側面の筋膜もほぐして調子を整えましょう。
近くに机やバーなど、手を置いて体を支えられるものがあればより良いでしょう。
①左手を真上にピンと伸ばし、左足を右足の前に出してクロスします。
机やバーなどがあれば、右手を置いておきましょう。
②左手を机の方に倒すようなイメージで傾けます。
左手から左足までが弓なりに伸びていくイメージで体全体を伸ばしましょう。
左の脇腹から腰のあたりが引き伸ばされているように感じるところでストップしましょう。
20秒ほどキープします。
左側が終わったら右側も同様に行いましょう。
背中をローラーやボールでほぐそう
筋膜リリースには、専用のローラーやボールが市販されています。
安価で手に入れやすいので、購入しても良いですし、自作も簡単にできます。
ローラーの作り方については、以前の記事でご紹介していますので、気になった方はぜひご覧ください。
壁のある場所で行いましょう。
①壁に背を向けて立ちます。
壁と背中でローラーを挟むように押し付けます。
②ローラーに体重をかけながら、膝の曲げ伸ばしで上下に動きます。
背中と壁のあいだでローラーが転がるのを感じながら、10秒ほど行いましょう。
床の上にローラーを置き、その上に寝転がって行ってもOKです。
また、ローラー以外にも、筋膜リリース用のボールを使ってもOK。
よりピンポイントにアプローチできます。
おわりに
今回は、背中のトラブルと全身の不調とのかかわりについてご紹介しました。
情報が多い現代では、さまざまな体の悩みを解決するための対処法もたくさん存在しています。
ぜひ、ご自身に遭った対策を見つけ出し、背中のトラブルに見舞われず過ごせるようにしましょう。